FACTOR 9 PEARLY GATES ESSENTIAL made in BISHU
パーリーゲイツが尾州で服をつくるわけ

「水の都」とも言われる愛知県一宮市を中心にした尾州地域。
木曽川の豊かな水と特有の自然環境に恵まれ古くから毛織物産地として発展してきました。
世界三大毛織物産地はイギリスのハダースフィールド、イタリアのビエラ、
そして日本の尾州と言われていることを現代の多くの人には意外と知られていない。

今シーズンは、その尾州で編まれたウールとポリエステルの生地が生まれた背景に焦点を当ててみます。

なぜ尾州で服を作るのか?
PEARLY GATES ESSENTIALを通して、その魅力をゴルファーたちにお届けします。

尾州の毛織物産業を支える(公財)尾州ファッションデザインセンターの存在

「尾」マークが象徴的な尾州ファッションデザインセンター

「この地域は、古くから綿などの繊維産業が盛んな地域でした。ところが、濃尾大震災(明治24年)により、綿畑・織物設備が壊滅的な大打撃を受けました。そこで、当時の新素材であったウールを導入し、付近を流れる木曽川の豊富な水の活用により毛織物産業が盛んになりました。その結果、尾州地域は毛織物の「尾州」として全国に知られることになったのです。」

そう語るのは、(公財)尾州ファッションデザインセンター(※1)の浅井さんと、朝比奈さん。
(※1 繊維産業を代表とする尾張西部地域の地場産業振興を図るため、昭和59年2月に開設された財団法人(当時)。開設以来、ファッション情報の収集・提供、新商品開発、人材育成などの振興事業に注力している。)

「分業で産地が成り立っているので、後継者不足や高齢化により撚糸工業(糸を加工する工場)など小さな家内工業が廃業してしまっている。さらに、全繊維の中でもウールが占める割合は3~4%だということもあり、量産効果が発揮できない。そして今の温暖化によりウールのコート自体、需要がかなり減っています。」

そんな中でも天然繊維であるウールの魅力はやはりその風合いと生地の表情。
「毛足が持つ柔らかな素材感と、特性として吸湿、吸水、発散、消臭などがあり、これは羊毛自身の持つ天然素材ならではの機能です。また加工段階で出る端材は全て再生素材として活用しており、その防炎性を活かし車の内装などに使用するなど、古くからそのサイクルを保っています。」

その価値に目を付けている海外のメゾンブランドが実は多くあるにも関わらず、産地のインフラが追い付いていないというのが現状です。

独自に開発された柔らかく、強度の高い編地

尾州産地は、紡績、糸染、撚糸、織布、編立、染色整理、修整などの分業により一貫体制がとられており各工程で特色を出しています。
今シーズンのエッセンシャルに採用されている生地は、ウール・ポリエステルの混紡糸からなる柔らかな編地。通常ジャケットとパンツといえばいわゆるスーツの生地をイメージすることが多い中で、見た目、肌触りともにとても軽く柔らかで立体的な仕上がりです。
この素材は尾張一宮駅から車で30分ほどにある山幸メリヤス株式会社※2という小さな工場で編まれています。

かつては数多く存在した尾州産地を象徴する「ノコギリ屋根」の工場内部

「ノコギリ屋根」と言われる独特の形状をした屋根は、戦前から昭和40年代頃までよく採用され、当時の紡績・織物工場が盛んなときに日本各地の繊維工場で主に建設されました。
大きな採光面で太陽光を取り入れ、直射日光の照射を防ぎ糸や生地の色や状態の確認に適した安定的な光源を得るための形状で暑さや雨漏りを避ける役割もあるそうです。

そんなノコギリ屋根を持つ工場の内部には、いくつもの大きな編み機がありました。それぞれの編み機ごとにゲージ数が設定され、手動で調節をしながら編んでいくものから高速で糸を編み込んでいくものや柄を入れるものなど、その用途によって使い分けをして1つの生地を作ります。

手動で操作する編み機を操作する山田さん

「表面と裏面で見え方が大きく異なるのが今回の生地の特徴。立体感のある表面は、太い糸と細い糸を並べなきゃいけない。そうしたときには太い糸の部分を入れるために機械の針を抜いたりして交互に編むことによって表面変化がでます。裏は逆にフラットなので、肌触りの良いスムースな二重組織になっています。生地の凹凸感と、メッシュのような構造でありながらしっかりした強度というところはかなり工夫を重ねました。」
と、山幸メリヤス株式会社(※2)の山田さんと、株式会社ヒラノ(※3)の堀尾さんは話します。

原料は細番手1/72のウール/ポリエステルと150デニールの帝人リサイクルポリエステルを使用。2種類の太さに差があることでより立体感のあるメッシュの風合いが表現できる。

ウールとポリエステルの糸による今回の生地。この編みの工程では編み機を操る山田さんと、それをまるで料理をするかのように糸を決め、機械の選定をし、どう編むか、縮率やハリ感のバランスなどちょっとずつ確認しながら仕上がりイメージを想像して進めていく堀尾さんとの綿密なやり取りにより少しずつ形になっていきます。

そうして完成したこの生地について「この組織(生地)、名前もないしね。普通の定番で流れるようになるとみんな名前つくけど、未だにこれはついとらんね。」
と話す山田さん。その言葉の意味は、どこにでも流通している大量生産のものではなく、組織から企画して生まれた完全オリジナルの生地という事を表しています。


(※2 創業1949年の丸編みを専門とした工場。衣料品以外にもカーシート、寝具、インテリアなどの丸編みを扱う)
(※3 尾州産地で繊維業を営む。生地の提案から企画、制作まで織物・ニットと幅広い素材を扱う。)

尾州産地への想い

山幸メリヤスと同じ尾州産地で1950年に創業した株式会社ヒラノ(※3)は、今回のPGエッセンシャルの生地を一緒に作り上げ、仕上げの行程まで行います。

「主に服地を作る工場として商社、アパレル、コーディネーター等顧客の皆様からのご要望をお伺いし、そのリクエストに対話を重ねながら具現化する役割を担っています。」
国内のアパレル企業だけでなく海外のメゾンブランドからの依頼も多くある尾州の製品。その理由は製品の質の高さだと話すのは、代表取締役の平野茂樹さん。
「尾州のものは、他の産地に比べると手がかかるものが多いです。特にコート地とかは反物を加工する段階において手間のかかる工程が多い。また温度湿度による工程時間も変化する。でもその工程を職人が施すことにより、見え方も風合いも大きく変化します。」

多くの工程を経て作られた尾州の生地。そのクオリティーの高さから、海外デザイナーからも高い評価を得ています。

一つひとつ機械を説明する平野さん

「やっぱり、色々な産地や顧客の方々と会話して生まれた新たな解釈や発見によって出来た生地が製品になるその過程が楽しいですよね。僕ら一人の考えなんて浅いから、それを一つのモノにしていくためにタッグを組んでやっていかないと。だから、出来上がった時っていうのはやっぱり達成感と喜びがあるんですよね。」

工場内は沢山の織機が並び、糸から生地になるまでの行程を丁寧に説明してくれた平野さん。
幼い頃から尾州産地を見てきたからこそ、繊維産業、そしてファッションそのものが持つ価値やその奥深さ、そしてその大切さを誰よりも感じているのかもしれません。

日本で生まれたゴルフアパレルブランド、
パーリーゲイツは
毎シーズン
さまざまな製品を展開しています。

何気ない日常をより楽しく豊かに過ごせるように。
そのコンセプトを持つESSENTIALでは
出来る限り日本の価値ある産業で
ものづくりをしていきたいと考えています。

この秋は確かな品質と歴史を持つ尾州のウールと、
スポーツの要素を持つポリエステルが融合した
パーリーゲイツならではの製品を通して
日本の誇れる尾州を知っていただき、
感じてもらえるよう
その魅力をお届けします。